リナと別れて、1001のフロアでセックス飯を注文する。
セックス飯とは端的に言うとセックスをした後に食べる飯のことだ。(いやすみません、これ以上の説明は正直思いつかないです。)
そう、伊丹十三の言う男の悦びをぼくはまだ味わえていないのだ。
今宵のセックス飯はサテとナシゴレン。インドネシアの王道を行ってみた。
ビュッフェでコイツが出てきて、ナシゴレンだと言い当てるよりは、ウォーリーを探すことの方が簡単だ。
ナシゴレンを食べている最中に、リナが他の男と部屋に向かう光景を見る。ナシゴレンの味がちょっとだけしょっぱく感じた。
スパの料金340万ルピア(約2万6千円)を支払い、1001を出ると、スカルノハッタ空港までタクシーで向かう。
今回は西洋風にオリーブ風味にしているが、やはり焼き飯であることに変わりはない。そして羽田経由で関空に着き、20時くらいに自宅に戻った。
月日は流れジャカルタ旅行から1週間が経ち、旅行のブログの草稿を休日にまとめている。
一息つくと、コーヒーを入れ、カサヴェテスの生誕80周年を記念するDVDBOXから「チャイニーズ・ブッキー」を自宅で鑑賞する。
チャイニーズ・ブッキーを殺した男こと、コズモ・ヴィッテッリは自ら経営するストリップ・バー『クレイジーホース』の借金完済の日に店の女たちを連れて、カジノに赴き、一晩で2万3000ドルの借金をする。(こういう自己破滅的なキャラが自分と重なり、単純にバカな男だと笑えない。)
そして、借金返済のため、地元の中国人の大物マフィアであるチャイニーズ・ブッキー殺しを命じられる。
ぼくがこの映画を観て最も印象に残ったのは、最後のシーン。
彼は観客に向けて云う、「セックスこそ全てと人は言うが、クレイジーホースはそれだけじゃない」と。
映画を見る限り、クレイジーホースのショーはお世辞にも素晴らしいと言えないし、コズモのこだわりの強さも理解しかねる部分があったが、この言葉が放たれた瞬間に自分の思いを代弁しているようで、泣けてきた。
ジャカルタでジャズを聴き、同じくジャズのインプロビゼーションに影響を受けたフリオ・コルタサルの『石蹴り遊び』のような文章表現を得られると思っていたぼくは、自分のブログのくだらなさと馬鹿さ加減に嫌気が刺していたが、このコズモの言葉にとても励まされた。
セックスだけが全てじゃない。
完