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魔の山:白山へ 1泊2日(山小屋泊)の登山①

総評:白山登山

登りは約4時間40分、帰りは3時間ちょっとで下れる。登山道は整備され視界も開けており、精神的なダメージも少ない。初心者~中級者にお勧めの山。コースは複数ありますが、砂防新道コースもしくは、観光新道コースの2つのコースが一般的なルートです。観光新道は急な林間コースのため、景色を楽しみたいなら行きは砂防新道コースにするのが良いと思います。また、山頂付近の池めぐりコースを楽しみたいなら山小屋に泊まるべきです。池めぐりコースは1周3.8キロ、約2時間かかりますので、ここまで含めた登山計画となると日帰りは厳しいと思います。

https://www.g-hakusan.gr.jp/

白山登山口までのアクセス

途中に所用で雄琴に行ったので、湖西道路から敦賀まで出て、北陸自動車を利用して福井北経由で勝山ICで降り、勝山の道の駅「恐竜渓谷かつやま」で一泊しました。ここから登山口の別当出合駐車場まで1時間くらいかかりました。「恐竜渓谷かつやま」は24時間トイレが空いており、コンビニも近くにあるので車中泊するには良いスポットです。

https://www.g-hakusan.gr.jp/

別当出合駐車場〜登山開始

平日の週末ということで別当出合駐車場の駐車率は6割くらい。ここの駐車場は無料。方向音痴なので「YAMAP」で地図をダウンロードし、準備は万端。登山届を提出し「魔の山」こと白山へ向かう。なぜ白山を「魔の山」と呼んでるかって言いますと休憩時間に読む小説としてトーマス男さんの「魔の山」を持って来たからです。学生時代以来、約十年ぶり。だから白山を「魔の山」とネーミングしたのは完全にこちら側の都合です。今回は「魔の山」の主人公ハンス・カストルプ君を好きになることができるのでしょうか? 

時間は朝の8時頃。いざ登山を開始する。道は石が積んであって登りやすい。流石は天皇御用達の山。ここの石達は苔のむすまでここに居続けるんだろうけど、天皇が石に躓こうものならライク・ア・ローリングストーン扱いされるんだろうな。「マウンテンズ・ハイ」って、こういうどうしようもないこと考えて浮かれる病気のことを指すんだと思う。

中飯場で休憩

1時間ほどして中飯場に到着。「YAMAP」で表示されるペースは標準より早いペース。ここにトイレと水場があり、コーヒーを飲みながらトーマス男さんの「魔の山」を読み始める。魔の山のまえおきを読む。

「というわけで、作者はハンスの物語を手短に話を終えるというわけにはいかないのである。一週間七日では足りないだろうし、七ヶ月でも十分ではあるまい。いちばんいいのは、話し手がこの物語に係り合っている間に、どれほど地上の時間が経過するか、その予定を立てないことである。」※トーマス・マンの『魔の山』を参照

時間を意識しながらでしか生活できない現代社会。山に来たんだから時間のことは忘れよう。そう思って僕は「YAMAP」のゴールまでの道のりを計測するモードの終了ボタンを押した。

ここからの道は山が開けていて景色がとても良い。右手に見える山間から流れる水を通す溝みたいな場所は「柳谷導流落差工」と言って人口の構造物。

「甚之助谷と万才谷から流出する洪水や土砂流を、谷の中心部に流れるように導くと同時に、洪水や土砂流のエネルギーを落差工で減少させて、渓床や渓岸斜面の侵食や崩壊を防ぐために作られた」という説明書きの看板がありました。

前にスイス人の映画監督フレディー・M・ムーラーのドキュメンタリー(『緑の山』)で山に核の産業廃棄物を埋め立てる施設を建てる計画があって、その計画に反対する地域住民を描くものがあったけれど、日本人もスイス人みたいなぶっ飛んだ考えを持たないで欲しいと思う。

 

 

 

雪道に遭遇する

途中のイスで寝る。時間に縛られない登山を実践する。徐々に岩場を登って行くとひんやりとした冷気が頬をさするので何かと思い頭を前に向けると季節外れの雪が道を部分的に覆っている。涼しさを感じ、頭の中で「すず、すず、何とかすず!!」と連呼する。広瀬すずと言う女優の名前が出なかっただけです。何てことはない。たまに引退したAV女優の高千穂すずと小さな声で連呼すると何だか少し恥ずかしくなった。

途中雪道ではしゃぎ過ぎて道を間違える。雪を普段見ることがないタイ人がするようなミスをした。ただタイ人の中でも札幌に在住のチャナティップだけはベストなコース通りをして決して雪道を外れることはないと思う。下らない戯言はマウンテン・ハイな気分が急上昇して来たことの証拠だ。

さらに登ると山の岩場の黒と雪の白とで山のカールが北海道の乳牛のようにボディペイントしたような姿が浮かび上がってくる。まさに北アルプス。山を登る一歩一歩が天国の階段を登るような気持ち。テレンス・マリックの映画『名もなき生涯』のような映像美が広がっている。映画と違って360度見渡せる大パノラマです。

 

北海道にいるような気分だったけど、気づいたら県境を超えて石川県側に入る。石川県側に入るとロック・リバー感が増す。この景色を観た山を愛するマルクス主義者が金沢を石川に強引に改名したんだと思う。「加賀百万石」を普通の岩に変えた男が辿った道のりは相当に険しい。最終的には黒ボコ岩に行き着く。存在がまさに唯我独尊だ。

宿泊先の室堂ビジターセンターへ

ここから今晩宿泊する室堂ビジターセンターまではあと少し。景色に見惚れながら歩いていたので息は上がっていないけれど、登って行くと少し太ももにダメージが残る。ガラスのエースは最後の気力をふり絞る。

ようやく今回宿泊する国際サナトリウム「ベルクホーフ」が見える。ちなみに「魔の山」に出てくるこのサナトリウムの本物はダヴォスにあります。さらに脱線すると今年行われたダヴォス会議のテーマは「グレート・リセット」。世界は資本主義システムの見直しを迫られている。ドイツの経済学者ヴォルフガング・シュトレークが予言するように世界は小さな崩壊を繰り返し、最後に救済者は現れず終焉を迎えるのだろうか?そんな事を考えた思考的にも脇道した登山だった。

白山の一日目の感想としては国際サナトリウム「ベルクホーフ」にドイツ系ロシア人のクラウディア・ショーシャ夫人かいなかったことが残念だった。でも彼女がいれば一泊二日では済まなかったことを考えると、それはそれで良かったかもしれない

《続く》