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魔の山:白山へ 1泊2日(山小屋泊)の登山②

白山の山頂・御池巡り

室堂ビジターセンターに着くと宿泊の手続きを始める。料金は素泊まりで8,300円。昨年度は6,300円だから、コロナ対策で値上がりしているようだ。山小屋に荷物を降ろしてから、山頂2,702mの御前峰(ごぜんがみね)を目指す。山に登ってるときにリスのような爬虫類のような機敏な生き物が出てきてビックリした。ドラマ「ツインピークス」でマングースのような動物の生態系を守るみたいなエピソードが出てきたけど、「グレート・リセット」が近づいたら、コイツと白山の自然環境をボブから守ってやりたい。

40分くらいで山頂に着く。ここからは御池巡り。御池には血の池があって、滋賀の蓮華寺の血の川のようにここで北条家が血を流したのだろうか?池の周りに近づくと白銀の世界と限りなく透明に近い湖のブルーがどこか別世界に誘われた感じがする。このデカイ湖とかはゲーム・オブ・スローズのドラゴンが死んだ場所を思い起こさせる。もしくは「エルマーの冒険」の竜の家族が住んでた場所にも似ている。でも断トツな有力候補は遊戯王のブルー・アイズ・ドラゴンかな。この湖の周りが白山で一番好きな場所になった。

山小屋での一時

山小屋には16時前につき、夕飯前にトーマス・男さんの「魔の山」を読む。時間間隔についての補説の章が印象に残った。

「単調とか空虚とかは、時間をひきのばして「退屈なもの」にするかもしれないが、大きな時間量、途方もなく大きな時間量が問題になる場合には空虚や単調はかえって時間を短縮させ、無に等しいもののように消失させてしまう。その反対に、内容豊富でおもしろいものだと、一時間や一日くらいなら、それを短縮し、飛翔させもしようが、大きな時間量だとその歩みに幅、重さ、厚さを与えるから、時間の多い歳月は、風に吹き飛ばされるような、貧弱で重みのない歳月よりも経過することが遅い。」

今を精一杯生きることで時間の歩みに幅、重さ、厚さを与えたい。そう思った。夕食はカップヌードルとおにぎりと生ビール。缶ビールは山小屋の売店で600円くらいで販売しています。山の澄み切った空気が飾り気のない食事を特別なものにする。辺りを見回すとおじさん達が大人の玩具のようにたくさんの調味料を抱えて豪勢な食事をしている。調味料は山の美味しい空気で十分な気がするのですが、いかが?

山小屋の中は還暦の男女のグループが大人の修学旅行のような雰囲気で盛り上がっていたが、20時になると消灯。寝静まる。「魔の山」みたいに変な咳をする患者がいなくて良かった。還暦の男女のグループは3時には起きて、ざわつき颯爽と小屋を後にする。僕は5時30分には起きて山小屋を出た。

 

早朝に下山

ちょうど山肌が朝焼けでオレンジ色に染まり始めた頃、その脇で小鳥達が喝采するように鳴き始めた山道の間を抜け、白山を下山する。山というのは見る角度や高さで全然違う表情を見せるから飽きない。そしてそんな魅力を持ちながら、そんな姿を親しい男にしか見せないのが女だ。山に見惚れているといつまでも山で暮らす生活がしたいという思いが自然と湧いてきた。

朝に山を下山し、昼前に会社について昼寝してまた山に帰る。都会的なリーマンではなく羊飼い的なリーマン生活がしたい。そんなことを思いながら涼しさの残る山の中腹まで降りた。下山のコースは行きとは別の観光新道。急で道が木々に囲まれているのでやはり帰りに使った方が良いと思う。夜に雨がふったせいで石畳の道の表面は滑りやすく慎重に足の下ろす場所を決めて行く。行き交う人は多く、途中で山小屋の様子を聞いてくる。さりげない会話でも心が少し晴れ晴れとする。朝の9時には別当出合に着いた。コース的にも丁度良い長さで北アルプス初心者に向いていると思う。いい感じで汗をかき、充実した登山だった。次は縦走して飛田山脈の方まで足を延ばしたい。

白峰温泉へ

白峰まで降りて温泉に入る。しばらく風呂に浸からないで汗をかいたまま、ざぶんと温泉に入るのが一番気持ちいいと思う。温泉施設は木をふんだんに使っており清潔感があって良い。暖かい湯に入り、登山で酷使した足の筋肉がゆるみ、温泉のぬるっとした成分が肌にまとわりつき体に浸透していくのがわかる。気持ち良過ぎて大声で叫びたい気持ちになったが抑える。シャンプーも最高。山と温泉のコンビネーションに完璧に癒される。

温泉を出た後に町を見学。美的景観地区は古民家が残っており、風情がある。この辺りのお店でざるそばセットを頼んだ。昔ながらの民家のような食事処で田舎のおばぁちゃん家に来たような雰囲気だ。付け合わせの山の幸も味噌仕立てとなっており、ほろ苦くもクセになる味だった。

食事を終えて道を歩きながら、大きなお世話だろうが、白峰温泉の町おこしについて考える。ふと思いついたのは鬼才デヴィッド・リンチの制作したコアなファンが多いことで知られるドラマ「ツインピークス」に出てくるミス・ツインピークス・コンテスト。このコンテストにオマージュを捧げる形で白山でミス・白山・コンテストを開催してはどうだろうか?女の子の基準はトーマス男の「魔の山」に出てくるドイツ系ロシア人クラウディア・ショーシャ夫人のように韃靼人(だったんじん)の瞳を持った病的に白い肌の女性。優勝者には白山にある国際サナトリウム「国際ベルクホーフ」の一年分の無料宿泊券が贈呈される。

おそらくオトナ女子や山ガールが白山におしかけエントリーするけど、優勝するのはアニメが好きで日本に遊学しているロシアの女の子だと思う。理由は圧倒的に白いから。そして僕はミス・白山コンテストを開催したい一心でここから200キロ離れた雄琴温泉に近いうちに訪問することを決めた。

《完》